KEIO OPEN INNOVATION PROGRAM/休日ハック | プロジェクト | 採用情報 | 京王電鉄株式会社

PROJECT


プロジェクト : KEIO OPEN INNOVATION PROGRAM/休日ハック

「小説×街歩き」体験コンテンツを共創し、
新たなファン層を、京王沿線に呼び込む

KEIO PROJECT "OPEN INNOVATION"

KEIO PROJECT "OPEN INNOVATION

KEIO PROJECT "OPEN INNOVATION

KEIO PROJECT "OPEN INNOVATION

KEIO PROJECT "OPEN INNOVATION

KEIO PROJECT "OPEN INNOVATION

外部企業との共創によってオープンイノベーション実現を目指す「KEIO OPEN INNOVATION PROGRAM」。そこから生まれた成果のひとつが、「小説×街歩き」体験コンテンツ「いつも駅からだった」です。第1話の下北沢編はどのようなプロセスを経て世に送り出されたのか? 第2話以降、どんな発展を遂げていったのか? プロジェクトの関係者4名に話をうかがいました。

浅見 和哉Asami Kazuya

経営統括本部
長期戦略室

2016年入社。スタートアップとの共創機会を創出すべく、「KEIO OPEN INNOVATION PROGRAM」の事務局として活動。

庄野 有美子Shono Yumiko

経営統括本部
長期戦略室

2017年入社。計画管理部需要創出担当にて本プロジェクトの推進役として、第1~2話の制作・PRなどを担当後、長期戦略室へ異動。

内山 裕介Uchiyama Yusuke

鉄道事業本部
計画管理部 需要創出担当

2008年入社。本プロジェクトの責任者として、立ち上げから社内外の調整までを所管。

福岡 由実Fukuoka Yumi

鉄道事業本部
計画管理部 需要創出担当

2022年入社。本プロジェクトの推進役として、第3話以降の制作・PRなどを担当。

Chapter1.

なぜ、オープンイノベーションへの
取り組みが始まったのか

浅見
京王電鉄がオープンイノベーションに注力しはじめたきっかけは、コロナ禍でした。人流に依存する多くの事業が打撃を受け、事業ポートフォリオの見直しを迫られたからです。2021年6月、オープンイノベーションの導入役として経営統括本部に新設されたのが、長期戦略チームという部署。現在の長期戦略室です。
内山
私が所属する鉄道事業本部 計画管理部 需要創出担当という部署も、同時期に発足。文字通り新たな需要を創出すべく、基幹となる鉄道事業でオープンイノベーションの実行役を担うことになりました。
浅見
自社単独ではなく、スタートアップ企業をはじめとした外部パートナーとの共創を目指した理由は2つあります。ひとつは、自分たちの価値観だけで進めると、市場ニーズを捉えきれないリスクがあるから。もうひとつは、従来の延長線上にないアイデアで、沿線に人を呼び込めると考えたからです。
庄野
これまでも鉄道利用を喚起する取り組みはありました。スタンプラリーもそのひとつ。ただ、どうしても一過性のイベントとなってしまうケースが多いという課題がありました。
内山
そこで、まずは共創パートナーを見つけようということに。浅見さんたちが立ち上げた施策が、2022年7月に実施した「KEIO OPEN INNOVATION PROGRAM」です。『誰もが知ってる鉄道を、まだ誰も見たことのない鉄道へ』というテーマを掲げ、鉄道事業変革につながる共創アイデアを募集。スタートアップを中心に約70社の企業からご応募いただき、その選考会には私も参加しました。
浅見
面接を中心とした数回の選考会では、次のような観点で審査させていただきました。鉄道部門の課題解決につながるか、人の流れを生めるか、お客様の利便性が向上するか、取り組み自体に新しさがあるか、継続性があるか・・・などなど。もちろんマネタイズできることも重要です。最終的に7社を採択し、そのうちの1社が株式会社休日ハックさんです。
内山
ご提案いただいたのは、「小説×街歩き」体験コンテンツです。従来のスタンプラリーのように、駅周辺の見所スポットを巡っていただく施策ですが、それを小説というストーリーに絡めている点がユニークかつ斬新でした。最終審査には当社社長も参加しましたが、社長の第一声は、「おもしろい。やろう」でしたね(笑)。
浅見
私も絶対に採択すべきだと思いました。単発で終わらない点がいいですよね。今回の小説はこの駅、次回作はこの駅というふうに、場所を変えながら回数を重ねていける。店舗なども巻き込むことで、沿線での広がりもつくれます。
庄野
「小説×街歩き」というコンテンツを開発したい休日ハックさんと、駅を起点に街まで行動範囲を広げてほしいという当社のニーズが、うまくマッチングしましたよね。

Chapter2.

小説を軸にした、画期的な新規事業アイデアを採択
新感覚コンテンツの鍵は、リアリティの徹底追求

浅見
採択後は長期戦略室の手を離れ、需要創出担当の皆さんでプロジェクト推進していきましたね。
内山
休日ハックさんとのプロジェクトについては、当時まだ需要創出担当にいた庄野さんと、私が担当しました。前例のない新規事業をどうすれば実現できるか。手探りの中進めました。
庄野
大枠はいくつか決まっていました。京王沿線を舞台にした短編小説シリーズをつくること。休日ハックさんとつながりのある小説家、岩井圭也先生に書き下ろしていただくこと。実在する駅や商店街、店舗を取り上げることなどです。まずは私が岩井先生と一緒に、舞台となりそうな駅をいくつか巡りました。その結果、先生からの要望で下北沢に決定。原稿を執筆いただき、それをベースに議論しました。
内山
当然、私たちが小説づくりに携わるのはこれが初めて。ストーリーは基本的に岩井先生にお任せしました。その代わり、実際の街歩きや駅中移動のリアリティにはこだわりました。ときには「この動線は不自然なので、再考いただけますか」とお願いすることも。取り上げる店舗への許可取りに関しても、庄野さんが1軒1軒回って確認してくれました。小説を書くだけなら裏取りをここまで徹底的にはやらないとのことで、岩井先生からは「とても新鮮な体験でした」と驚かれました。
庄野
逆に私たちにとって新鮮だったのは、お店のセレクトです。社員視点だとどうしても、認知度の高い路面店やチェーン店、マネタイズできる自社施設に目が行ってしまう。でも岩井先生は、下北沢ならではの古着屋や音楽を流すカフェなどを、物語に合わせて選んでくれました。それがとても効果的でした。
内山
味わい深い個人商店との出会いが、街の魅力の再発見につながる。我々が見逃してしまうようなお店を選んでくれて、休日ハックさんと組んだ意義を感じました。
浅見
まさにオープンイノベーションだからこそできたことですね。近くで見ていて、お二人とも楽しそうに取り組んでいる姿が印象的でした。かなりやりがいを感じていたのでは?
庄野
はい。つくる過程もおもしろかったですし、形にできたときの感動も忘れられません。友情をテーマにした第1話「下北沢編」のリリースは2022年3月。無料配布とはいえ、お客様が手に取ってくれるか不安でした。そんな中下北沢駅の高架下複合施設「ミカン下北」で岩井先生のサイン会を行ったところ、その日だけで300冊くらいお渡しできたんです。安心したのと同時に、達成感でいっぱいになりました。
浅見
私も実際に読んで、街歩きをしましたが、一体験者としてとてもワクワクしました。ちゃんと街を回遊する動線になっていて、謎解きの難度もちょうどいい。リアリティにこだわったコンテンツだからこそ、小説の世界と現実の世界が重なるという、不思議な体験ができました。もちろん、岩井先生の小説自体がおもしろいことも大きいですが。本当に感動しました。

Chapter3.

目指すは、京王沿線で「一家に一冊」

内山
2話目以降はスムーズでしたね。1話目はなにしろ実際の小説がないから、店舗への許可取りの際、「小説と街歩きを組み合わせて……」と説明してもなかなか伝わらなかった(笑)。渡せる小説ができたことはものすごく大きい。2話目は高尾山口駅、3話目は調布駅と、京王沿線でも特色の出せる駅を舞台に選びました。
庄野
私は3話目の「調布編」の下準備まで担当し、浅見さんのいる長期戦略室へ異動することに。後任として引き継いだのが福岡さんです。
福岡
以前より庄野さんのお仕事を見ていて、いつか自分の視点を活かして携わってみたいと思っていたので、担当になると決まったときはとても嬉しかったです。庄野さんが敷いてくれたレールをただ走るのではなく、さらに新しい要素を追加していくのが自分の役目だと考え、プロジェクトに参加しました。
内山
若手ならではの感性で、素敵なアイデアをたくさん出してもらっています。
福岡
ありがとうございます。小説と現実世界をリンクさせた体験づくりや、声優さんを起用したPR施策、お客様にX(Twitter)で拡散していただく仕組みの構築など、自分なりに知恵を絞りました。商店街とコラボして、より盛り上がる仕掛けづくりにも挑戦しました。
庄野
休日ハックの田中社長と福岡さん、両者の熱量がとても高いんです。「もっといいものにしてみせます!」と双方から言われる(笑)。回を重ねるごとに、どんどんクオリティが上がっていますよね。実際、お客様からの反響も大きくなっているので、私も1ファンとして今後の展開が楽しみです。
福岡
お客様のお声は励みになりますよね。先日たまたま調布駅を通ったときに、第3話「調布編」の在庫がなくてお困りのお客様を見かけたことがありました。他の配布場所をお教えしたところ、「全駅読んでいるのよ。今回も楽しみで」と大変喜んでくださりました。その笑顔を見て、本当に嬉しい気持ちになりました。将来的には全駅分つくり、京王沿線で一家に一冊くらい浸透させることができたら最高です。
内山
実は当初、早期マネタイズを視野に入れて「販売」することも検討しました。でも、それではこの企画が大きく育たないと考え、あえて無料配布へと舵を切ることに。事業の成否に関わる大きな決断でした。まだ答え合わせはできていませんが、回を重ねるごとに配布数が増えているので、正解に近づいていると信じています(笑)。今後は、京王沿線以外(関東近郊以外)のお客様にも届く話題性のあるコンテンツに育てられたらより良いと思っています。それをきっかけに沿線外のお客様が京王沿線に足を運ぶ機会となり、移動需要が創出できることを期待しています。
浅見
休日ハックさんとの共創によって、我々では考えつかないコンテンツを送り出すことができました。プロジェクトメンバーの皆さんも生き生きとしていて、オープンイノベーションに取り組んで良かったと感じています。同時に、京王グループのリソースを使えば、こんなにユニークな事業に挑戦できるという発見もありました。こうした共創の機会を、今後もつくり続けたいと思います。