TCFD提言への対応について

気候変動に関する基本的な考え方

TCFD

京王グループでは、グループ理念に基づきステークホルダーの皆様のくらしを支える事業を通じて、未来社会に豊かな環境を引き継ぐために、環境に配慮した活動を行っており、中でも、気候変動の緩和のために省エネ施策の実施など環境負荷低減に積極的に取り組んでまいりました。 また、サステナビリティ経営の推進にあたり、「環境にやさしく」というマテリアリティを掲げるとともに、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)※」へ賛同の意を表明し、提言に沿った情報開示を進めています。当社グループのCO₂排出量の削減目標としては2050年度実質ゼロを掲げ、中間地点となる2030年度の削減目標も設定しています。京王グループの主力事業である鉄道は、他の輸送機関と比べて環境負荷が少ないという特性を活かし、今後も多くのお客さまにご利用いただくことで、CO₂排出量削減に貢献してまいります。

  • TCFD (Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)効率的な気候関連の財務情報開示を企業等へ促す、民間主導のタスクフォース。金融安定理事会(FSB)が2015年に設立し、気候変動がもたらすリスクおよび機会の財務的影響を把握し開示することを目的とする。

1.ガバナンス

代表取締役社長を議長とするサステナビリティ推進委員会を中心に社内の関係部署と連携して、気候変動が当社事業に及ぼす影響に関する検討を行い、環境施策を立案・推進しています。その際、代表取締役社長及び関係役員は、気候変動に関する検討内容を経営に反映するとともに、取締役会が気候関連問題への取り組みをモニタリングしています。

2.リスク管理

当社ではサステナビリティマネジメントを推進する中で、気候変動に関するリスクについて、サステナビリティ推進委員会にてリスクの認識・評価を⾏い、経営計画への反映やモニタリングを⾏っております。 気候変動の緩和に関しては、連結環境⽬標として掲げたCO₂排出量の削減について、サステナビリティ推進委員会の中で進捗管理や分析・対応策検討の協議を⾏うほか、気候変動への適応に関しては、鉄道事業における物理的リスクの低減に向け、事業計画の中で激甚化する気象災害への対策を強化、推進しています。

ガバナンス・リスク管理体制図

3.戦略

当社事業のうち、気候変動の影響が大きいと想定される鉄道事業を対象とし、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)および国際エネルギー機関(IEA)による4℃シナリオ(現状を上回る温暖化対策を取らないことにより、産業革命時期比で気温が約4℃上昇し、気候変動による物理的変化に関するリスクが顕在化)と2℃未満シナリオ(抜本的なシステム移行が達成されることで、産業革命時期比で気温の上昇が2℃未満に留まり、低炭素経済への「移行」に関するリスクが顕在化)に基づき、事業に影響を及ぼす可能性のある短期・中期・長期のリスクと機会の洗い出しを行いました。中・長期かつ特に影響が大きいと特定したリスク・機会と、リスクへの対応策を別表に示しております。

(1)リスク
リスクが顕在化した際の影響 リスクへの対応策
移行リスク
  • エネルギー調達コストの増加
    • カーボンプライシング進行によるエネルギー調達コストの増加
    • 再エネ賦課金の上昇による電力調達コストの増加
  • 顧客の評判・行動変化による売上減少
    • 他の交通手段に対する環境優位性が低下することによる利用者数の減少
  • 資材調達コストの増加
    • サプライヤーの環境コストが価格転嫁されることによる資材価格の上昇
  • 省エネ設備、自己発電設備の導入
    • 駅舎補助電源装置
    • 回生電力貯蔵装置
    • 車上蓄電池
    • 太陽光発電
  • ソフト対策による使用電力量削減
    • モニタリングシステム活用による省エネ運転
    • 地下駅の空調チューニングによる省エネ
  • 再生可能エネルギー由来の電力調達の検討
物理的リスク
  • 気象災害による営業停止に伴う売上減少
    • 大型台風や集中豪雨等の気象災害による施設・情報システムの損壊、本社や各事業所の機能停止、営業活動の停止
  • 災害対応コストの増加
    • 大型台風や集中豪雨等の気象災害からの復旧や気象災害を見据えた設備改修に要するコストの増加
  • 顧客の外出意欲減退による売上減少
    • 気象現象の極端化(集中豪雨、暑熱)による旅客数の減少
    • 新規感染症発生に伴う利用者の減少
  • サプライチェーンの分断
    • サプライヤーの物流寸断による資材不足
  • 気象災害被害の最小化
    • 気候変動に伴う気象災害の変化に対応できるよう適宜BCPを見直し
    • 気象情報システムや民間気象情報サービスの活用による気象情報収集と、それに応じた運転の実施
    • タイムラインを活用した車両疎開
  • 気象災害対策
    • 線路脇の法面改修
    • 防風壁整備
(2)機会
機会が顕在化した際の影響
機会
  • エネルギー調達コストの減少
    • 設備等のエネルギー効率向上に伴うエネルギー消費の減少
    • 省エネ技術開発によるコスト削減
  • 低炭素型製品・サービスによる売上増加
    • 他の交通手段に対する鉄道の環境優位性が再評価されることによる利用者数の増加
    • MaaS普及に伴う公共交通機関の利便性向上による利用者数の増加
  • 災害適応型製品・サービスによる売上増加
    • 他の交通手段に対する鉄道の災害時安全性が評価されることによる利用者数の増加
    • 災害リスクが低いエリアへの顧客流入

4.指標と目標

京王グループ(連結)の環境目標としてCO₂排出量(scope1,2)の削減目標を設定しています。CO₂排出量を 2050年度に実質ゼロとする目標を新たに掲げ、その中間目標である2030年度に連結として2019年度比30%、鉄道では2013年度比46%の削減を目指します。 省エネの着実な推進に取り組むとともに、技術革新の動向や事業採算性を踏まえて、再生可能エネルギーの導入などの検討も進め、脱炭素社会に向けた取組みを積極的に進めてまいります。

  • 京王グループ(連結)の環境目標

  • 鉄道の環境目標