地域社会の発展と当社の成長は
一体不可分との認識で、
社会的課題の解決に取り組む
代表取締役社長 社長執行役員
新型コロナウイルスの感染拡大により、鉄道グループのビジネスモデルは根底から揺るがされる事態となりました。直接的な要因は、リモートワークの普及による通勤需要を中心とした人流の減少ですが、価値観の多様化・雇用と働き方の変化・社会全体のデジタル化・競争環境の変質という、時間をかけて将来到来したであろう事象が新型コロナウイルス感染症の流行により急速に進展したとも言え、人々のライフスタイルは一部不可逆的に変化し、従前の状態に戻ることはないだろうと考えます。つまり、経営環境は急速かつ大幅に変貌したと考えざるを得ません。
しかしながら、鉄道会社が歴史的に担ってきた役割・責任は、沿線の生活者の幸せな暮らしの実現にあることを、改めて実感することにもなりました。150年前、明治初期の頃は、日本の産業革命の影響で都心部の生活環境が急激に悪化したことをうけ、鉄道会社が率先して郊外での生活を提案し、開発を進めてきた時代です。郊外にレジャー施設・文化施設をつくり、移動機会の創出とともに、健康的で文化的な生活の提供に貢献してきたわけです。
コロナ禍が引き金となり人々の価値観が大きく変化している現在は、鉄道事業が始まった明治初期の近代化の時代と同じレベルの変革期と言えます。本年で京王線開業110周年となりますが、鉄道事業者の原点とも言うべき、新しいライフスタイルを牽引する役割を愚直に追求することが、私たちの変わることのない存在意義だと考えています。
ここで改めて代表取締役社長をサステナビリティ推進委員長とした体制を構築し、当社の社会的責務を再定義した上で、取り組みの内容・方向性を統合報告書によりステークホルダーの方々へ開示する運びとなりました。今後も引き続き持続可能な社会の実現に貢献し、長期的な企業価値向上を目指してまいります。
私たちの基本的な経営資源は、長年にわたって交通事業を中心に安全・安心を追求してきたことにより培ってきた信頼のブランドと、それを支える人財・財務基盤です。交通事業の安全確保は、いかなる経営環境においても手を抜くことのできない最大のテーマとなります。
そして、街の結節点である駅を基軸とした「まちづくり」により、人々の移動促進と活気ある沿線を実現することが、企業としての成長・発展につながります。沿線活力が私たちの価値の源泉であり、共通の利害を持つ沿線地域のパートナーとのネットワークをより強固にしながら、街の魅力の最大化に取り組んでまいります。