気候変動提言のフレームワークに基づく統合的な情報開示

基本的な考え方

ガバナンス

私たち京王グループでは、グループ理念に基づきステークホルダーの皆様の暮らしを支える事業を通じて、未来社会に豊かな環境を引き継ぐために、環境に配慮した活動を行っています。気温が上がることで、水不足や生態系の変化などが起こるリスクが増加するなど、気候と自然は深く関連しています。当社では、「環境にやさしく」というマテリアリティを掲げるとともに、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」へ賛同の意を表明しており、このフレームワークを踏まえ、気候変動をはじめとした統合的な環境情報の開示を行ってまいります。

リスク管理

当社ではサステナビリティマネジメントを推進する中で、気候変動に関するリスクについて、サステナビリティ推進委員会にてリスクの認識・評価を行い、経営計画への反映やモニタリングを行ってまいります。その中で気候変動の緩和に関しては、非財務KPIとして掲げたCO2排出量の削減について、サステナビリティ推進委員会の中で進捗管理や分析・対応策検討の協議を行うほか、気候変動への適応に関しては、鉄道事業における物理的リスクの低減に向け、事業計画の中で激甚化する気象災害への対策を強化、推進しています。

指標と目標

京王グループ(連結)の非財務KPIとしてCO2排出量(Scope1、2)の削減目標を設定しています。CO2排出量を2050年度に実質ゼロにすることを目標としており、その中間地点である2030年度には連結として2019年度比30%、鉄道では2013年度比46%の削減を目指します。

  • 京王グループ(連結)の環境目標

  • 鉄道の環境目標

戦略

国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)および国際エネルギー機関(IEA)による4℃シナリオと2℃未満シナリオに基づき、事業に影響を及ぼす可能性のある気候変動・自然資本を対象に短期・中期・長期のリスクと機会の洗い出しを行いました。中・長期かつ特に影響が大きいと特定したリスク・機会と、リスクへの対応策を下記に示しました。

4℃シナリオ:現状を上回る温暖化対策を取らないことにより、産業革命時期比で気温が約4℃上昇し、気候変動による物理的変化に関するリスクが顕在化
2℃未満シナリオ:抜本的なシステム移行が達成されることで、産業革命時期比で気温の上昇が2℃未満に留まり、低炭素経済への「移行」に関するリスクが顕在化

リスク・機会一覧(鉄道事業)

(1)リスク
リスクが顕在化した際の影響 リスクへの対応策
移行リスク
  • エネルギー調達コストの増加
    • カーボンプライシング進行によるエネルギー調達コストの増加
    • 再エネ賦課金の上昇による電力調達コストの増加
  • 顧客の評判・行動変化による売上減少
    • 他の交通手段に対する環境優位性が低下することによる利用者数の減少
  • 資材調達コストの増加
    • サプライヤーの環境コストが価格転嫁されることによる資材価格の上昇
  • 省エネ設備、自己発電設備の導入
    • VVVFインバータ制御装置
    • 駅舎補助電源装置
    • 回生電力貯蔵装置
    • 車上蓄電池
    • 太陽光発電
  • ソフト対策による使用電力量削減
    • モニタリングシステム活用による省エネ運転
    • 地下駅の空調チューニングによる省エネ
  • 再生可能エネルギー由来の電力調達の検討
物理的リスク
  • 気象災害による営業停止に伴う売上減少
    • 大型台風や集中豪雨等の気象災害による施設・情報システムの損壊、本社や各事業所の機能停止、営業活動の停止
  • 災害対応コストの増加
    • 大型台風や集中豪雨等の気象災害からの復旧や気象災害を見据えた設備改修に要するコストの増加
  • 顧客の外出意欲減退による売上減少
    • 気象現象の極端化(集中豪雨、暑熱)による旅客数の減少
    • 新規感染症発生に伴う利用者の減少
  • サプライチェーンの分断
    • サプライヤーの物流寸断による資材不足
  • 気象災害対策
    • 線路脇斜面の法面改修工事
    • 防風壁整備
    • 止水板等による施設浸水対策
  • 気象情報の収集と活用による気象災害被害の最小化
    • 気象情報システムの活用による被害予測と民間気象情報サービスの活用
    • タイムラインを活用した車両疎開
(2)機会
機会が顕在化した際の影響
機会
  • エネルギー調達コストの減少
    • 設備等のエネルギー効率向上に伴うエネルギー消費の減少
    • 再生可能エネルギーの拡大による電力調達コストの低下
    • 省エネ技術開発によるコスト削減
  • 低炭素型製品・サービスによる売上増加
    • 他の交通手段に対する鉄道の環境優位性が再評価されることによる利用者数の増加
    • MaaS普及に伴う公共交通機関の利便性向上による利用者数の増加
  • 災害適応型製品・サービスによる売上増加
    • 他の交通手段に対する鉄道の災害時安全性が評価されることによる利用者数の増加
    • 災害リスクが低いエリアへの顧客流入

インターナルカーボンプライシングの導入

京王グループでは、企業が独自にCO2排出量をコスト換算する「インターナルカーボンプライシング(ICP)」を導入しております。CO2排出量1tあたり7,000円に設定し、CO2削減の取り組みを促進することや、気候変動リスクを算定・把握するための指標として活用してまいります。