Special5つのテーマから読み解くKEIOのスタンス

街に溶け込み、
永く愛されるために。
調布とともに育つ
「トリエ京王調布」
利用者への思いを込めた
座席指定列車への挑戦
「京王ライナー」

02THEME

人を主役に据えるために

京王電鉄では、京王線の柴崎駅~西調布駅間(約2.8km)と相模原線の調布駅~京王多摩川駅間(約0.9km)の約3.7kmの区間を地下化する調布駅付近連続立体交差事業を2003年度から2014年度までの約11年間をかけて完遂しました。
地下化により創出された地上部では、拠点開発による「住んでもらえる、選んでもらえる沿線」の実現および調布市の中心市街地活性化を目指し、調布駅周辺で商業施設の開発を行いました。
トリエ京王調布は、都心から近いながらも自然が多く残る調布の街の魅力を活かし、ナチュラルでスローなライフスタイルを発信する「調布らしいちょっとステキな生活」をコンセプトに、「映画のまち調布」にふさわしいエリア初となるシネマコンプレックスを誘致したほか、オーナーが調布市出身の猿田彦珈琲、関東最大級の成城石井など多彩な専門店をそろえ、2017年9月に開業しました。トリエ京王調布が、調布という街に、どのような役割を期待されているのか。開業にかける想いを、地域の立場と京王電鉄の立場から、それぞれ語ってもらいました。

上村 裕希Uemura Yuki

SC営業部

2001年入社。商業開発部、開発企画部、SC営業部などを経て、2011年、開発推進部に異動。2012年から調布駅周辺開発に携わる。2017年にSC営業部に異動し、店舗の誘致、施設運営の仕組みづくりの担当として、トリエ京王調布を開業させる。

柴田 大輔Shibata Daisuke

開発推進部

2005年入社。株式会社東京スタジアムへの出向、開発推進部でのオフィスビルや住宅の営業管理、住宅系の開発を経験したのち、2012年から調布駅周辺開発に携わる。行政協議や工事関係を担当し、トリエ京王調布を開業させる。

中澤 正勝Nakazawa Masakatsu

「調布駅前から盛り上げる会」
「調布駅前商店街」「上布田商栄会」会長

明治時代から調布で営業を続ける「なかざわ商店」店主。調布市商工会青年部や消防団での地域活動を経て、調布市商工会活動に参加。親子2代にわたって上布田商栄会の会長を務め、「調布駅前から盛り上げる会」や「調布駅前商店街」を立ち上げる。

至上命題は「地域の想い」を形にすること

中澤

最初にお二方にお会いしたのは2012年頃だったでしょうか。京王電鉄さんにセッティングしていただいた説明会に、上布田商栄会の役員として参加させてもらったタイミングだったと思います。私も含めて街のみんなは、調布の街が盛り上がることならなんでもやってくださいという気持ちでした。自分たちのお店の利益というよりは、街にどのようにお客さんを集めて、賑わいをつくるかという視点で自由に意見しましたので、今思えば京王電鉄さんの採算などは度外視で、色々と無理を言ってしまったところもあるかもしれませんね。

上村

調布駅の地下化に伴って、駅前にできたスペースをどのように活用して、どのように街を盛り上げていくか、というのが私たちの命題でした。その方法がトリエ京王調布という商業施設の開発であったわけですが、私たちの施設だけでお客様を囲い込むのではなく、街全体が賑わうことがトリエ京王調布の発展にもつながるという想いでお話させていただきました。中澤会長は街への熱い想いとともに、調布の街のことを客観的にも理解していらっしゃって、とても前向きなご提案をいただいたと思っています。

柴田

私たちは鉄道会社ですので、沿線の街とともに成長していくことを目指しています。街は鉄道会社がつくるのではなく、実際にそこで生活する人々の想いによってつくられていくものだと思います。「もっとこういう風にしたい」とか「こうだったら良いのに」といった地域の方々の意見をお聞きし、私たちが持つ資源やノウハウを活用しながら一緒に街をつくっていくのが私たちの仕事だと思っています。

街の一員になって、街を知る

上村

地域の皆様の声をお聞きしたくて、開発計画の段階から、近隣への説明会を何度も行いました。最初の説明会終了時、拍手が起こったのですが、それが私としては非常に印象的でした。こういった説明会の場で、拍手が起きるというのはなかなかないことで、トリエ京王調布を開発するというお話を前向きに捉えていただいているのだなと嬉しく思いました。

中澤

京王電鉄さんは10回以上も説明会を開いてくださって、とても丁寧な印象を受けました。またそれ以上に、お二人とは日常的にやり取りする間柄になっていただきまして。特に用がなくても、近くに行ったついでにおじゃまして雑談させていただくこともありました。

柴田

私たちにとってはとてもありがたいというか、自然に、気付いたらこんな関係になっていました。中澤会長のお人柄によるところもあるのですが、とてもフランクにやり取りできました。仕事で煮詰まったときに中澤会長とお話をすると、応援していただいているのがこちらにも伝わってきて、嬉しかったのを覚えています。

上村

お祭りのときにパルコさんと一緒にお神輿を担がせていただいたり、街の一員として受けいれていただけているんだなと思いました。

中澤

調布の街のために新しい何かをつくる人たちですから、それはもう調布の人ですよ。日常的に他愛のないやり取りができる間柄を築いていなければ、お互いにとって良いものはできません。

郊外の駅前ランドマーク施設
都心の商業施設とも異なる役割とは

柴田

街に住んでいる方はそれぞれ、多少の違いはあっても「調布」の街を良くしたいという想いをお持ちで、「調布」という街に誇りを持って暮らしていらしたので、その想いに応える「調布」を体現するランドマークを開発したいと思っていました。

上村

駅前につくる以上、回遊性であったり、利便性であったり機能的にも優れた商業施設が求められますが、駅前は街の顔になる大切な部分なので、トリエ京王調布は機能的だけではない街のイメージをつくる施設とすることが必要でした。

中澤

映画の街にちなんで、シネコンを入れていただいたのはとても心強かったです。都心に近いけれど自然豊かであることも、随所にアピールしていただいていると思います。また、旧駅ホームがあったことにちなんで本物の線路レールを敷いている「てつみち」で子どもたちが遊びまわる様子も良いですよね。古きも新しきも交わるような印象を受けました。

上村

自然豊かであるという、都心の商業施設とは異なる居心地の良さを調布らしい魅力として打ち出すことに力を注ぎました。「てつみち」は小さいお子様だけでなく大人の方にも大変好評で、楽しんでいただいている姿を見るとつくって良かったなと思います。

柴田

開業させるまでは本当に大変でしたが、妥協せずに取り組み、理想の形でトリエ京王調布をスタートさせることができたのは奇跡的ですらあります。

利用するごとに街への愛着が増す――。
そんな商業施設を目指して。

中澤

A館からC館までの東西とそれぞれの館の南北を、人が通り抜けられるような施設にしてほしいと要望を伝えていたのですが、そのとおりにつくっていただきました。トリエ京王調布ができて人の流れが広がっていると思います。また、若いお母さん方の姿が増えたというか、以前よりも駅前でよく見かけるようになった気がします。あと、やっぱり来る方の笑顔がよく見えるというのは良いですね。

柴田

ずっと開業の日を思い描いて何年もやってきましたので、お客様の期待に満ちた笑顔を直接この目で見ることができた日は、もう言い表せないくらい嬉しかったですね。開業のときにドアを開ける役だったものですから、そのことをよく覚えています。

上村

ただ、トリエ京王調布は開業のタイミングが一番盛り上がる商業施設ではなく、利用するごとに段々と愛着が増すものにしたいと、これは最初の段階から目標にしていました。「10年後にどんな施設になっているか」を考え続けるという意味では、今もまだトリエ京王調布をつくっている真っ最中とも言えます。

中澤

説明会の開催も含め、トリエ京王調布をつくるという事業に携われたことは、街にとって重要なことだったと思っています。トリエ京王調布の開業をきっかけに「調布駅前から盛り上げる会」など、街が連携する仕組みもつくることができました。トリエ京王調布を目指して街に来た人たちに、商店街にまで足を伸ばしていただいたり、ひいては調布に住みたいと思ってもらったり、そういうステップはまだまだこれから、調布のみんなで考えていく必要があります。京王電鉄さんと商店街、互いに協力し合いながら想いをもって開業を迎えましたが、これからもお互いに支え合えるような関係でいたいですね。

柴田

こう言うとおこがましい部分もあると思いますが、トリエ京王調布をつくることは調布の街をつくることだ、というくらいの気持ちでこの事業に携わりました。調布はもともと、「住んでよかった街」としての評価は高いのですが、「住みたい街」としてなかなか名前があがりません。街イメージの不足も大きかったと思いますが、トリエ京王調布を含む駅前全体がこれからもちょっとステキな雰囲気を醸成し、「住みたい街」として調布が話題になることを期待しています。

上村

今後も、トリエ京王調布が調布の街と一緒に成長していけたらいいなと思っています。

※掲載内容は取材当時のものです。

京王線初の有料座席指定列車として、2018年に運行を始めた京王ライナー。京王が築き上げてきたお客様の信頼を引き継ぎながら、新しい京王のイメージをつくる一大プロジェクト。沿線に対するどのような想いが、このプロジェクトを突き動かしたのか。列車運行計画と車両開発の担当者に、当時を振り返ってもらいました。

「これまでの利便性」を損なわず
「これからの快適さ」を手に入れる。
より快適な乗車体験を提供するダイヤ改正。

釜田 雄介Kamata Yusuke

鉄道営業部 管理課
2012年入社/経済学部経済学科卒

京王電鉄が挑む3つめの課題
お客様の「快適さ」向上のために

私は京王ライナーが導入される際、運転課にて列車運行計画の作成、いわゆる列車ダイヤの作成業務を担当していました。
列車ダイヤは、鉄道部門のみならず多くの関係部門が一致団結してつくり上げる、京王電鉄全体の「商品」です。鉄道を利用されるお客様は、その「商品」をお買い求めいただいている方々と考えることもできます。ダイヤ担当者には、そうしたお客様の顔を具体的に思い浮かべながら、商品開発にあたる姿勢が求められます。
お客様が鉄道の運行という「商品」に求めるのは、安全を大前提とした上での「早さ」「正確さ」「快適さ」です。近年では、「早さ」を向上させるための相模原線特急導入や、朝ラッシュ時の「正確さ」を向上させるためのダイヤ改正などを実施しました。しかしながら、通勤・通学路線としての性格が強く、1日180万人以上のお客様が利用される京王線・井の頭線において、「快適さ」を向上させることは容易ではなく、特に乗車時間が長くなる京王線の長距離利用時の快適性向上は長年の課題でした。
座席指定列車である京王ライナーは、3つ目の課題である「快適に鉄道を利用したい」というお客様の気持ちに応えるものとして導入されました。

お客様の利益を最大化するために増発という選択肢

京王ライナー導入の検討は、運行を開始する3年半以上前の2014年夏頃から始まりました。私自身は運転課に異動した2015年春頃から関わり、京王ライナーに関する様々な課題を解決していくプロジェクトチームの一員になりました。
当初より、京王ライナーを平日夜間の下り列車とすることは決まっていましたが、それ以外の運行形態は白紙の状態でした。導入を検討していた平日夜間は、当時既に3分に1本以上の頻度で列車が運行されていたため、これ以上列車本数を増やすことは難しく、通常列車の一部を京王ライナーに置き換えるダイヤにせざるを得ないと考えられていました。しかし、それでは通常列車を利用されるお客様の利便性が低下してしまいます。京王線を利用されるすべてのお客様の利便性を考えた結果、あえて困難と思われていた「増発」による京王ライナーの導入という道を選びました。
当然、懸念事項はありましたが、新宿駅などの現場に何度も足を運び、どうすればこのダイヤを実現できるか、秒単位での調整を続けた結果、最終的には増発によるダイヤ設定とすることができました。こうした経緯で、当社初の座席指定列車の運行ダイヤが誕生しました。今後改善していくべき点も当然ありますが、大きなトラブルもなく運行されていることに喜びを感じています。

お客様の日々の生活を思い浮かべながら
的確にニーズに応えていく

当社初の座席指定列車となる京王ライナー導入に際して、ダイヤ担当者として責任やプレッシャーを感じることもありました。ですが、沿線にお住まいのお客様の日々の生活に向き合いながら、ダイヤ改正という形でダイレクトに貢献できることに対し、今までの人生で経験したことがないほどのやりがいを感じることができました。現在はダイヤ作成とは異なる鉄道部門の人事・労務の仕事をしていますが、沿線のお客様の日々の生活を支える鉄道員の採用や育成に携わっていることに、やりがいと責任の重さを感じています。今後も仕事にやりがいや責任感を持ちながら、時代の変化に対応し、お客様のニーズに応えていくことができる人間に成長していきたいと考えています。

釜田 雄介Kamata Yusuke

鉄道営業部 管理課
2012年入社/経済学部経済学科卒

2012年入社。車掌、運転士を経験した後、2015年より鉄道営業部運転課にて京王ライナーに携わる。現在は、鉄道営業部管理課に異動し、現業職場で働く社員の採用や研修、要員管理といった人事や労務関係の仕事を担当している。

※掲載内容は取材当時のものです。

めまぐるしく変化するお客様のニーズを
的確に捉えて“かたち”にしたい。
沿線の人々への想いを新型車両に込めて。

大川 晶Okawa Akira

車両電気部 車両計画改良担当
2009年入社/工学部制御システム専攻卒

「ゆっくり座って帰る」という体験を
じっくり味わえる車両を開発する

私の所属する車両計画改良担当の役割は、京王線・井の頭線を走る「鉄道車両」を通じ、お客様へより良い鉄道輸送サービスを提供することです。具体的には新造車両や既存車両の改造、廃車の計画立案、設計、工事の施工管理を行っています。京王ライナーの導入においては、新造車両の計画、設計、施工管理と、新しい車両をつくるまでの一通りを担当しました。
京王ライナーの開発は、これまで京王にはなかった「座席指定」という新しいサービスに取り組むことです。「ゆっくりと座って帰れる」という点に注力し、ご利用いただくお客様に「次も乗りたい」と思ってもらえることを第一に考えながら、座席の座り心地には妥協をゆるさずに研究を重ねました。また、車内の装備品や内装にも細部までこだわり、京王のイメージを一新するデザインと、高級感と落ち着きのある空間を目指しながら、同時に車両としての快適性や乗り心地の良さを追求しました。
京王ライナーに使用する5000系車両はロング・クロス転換座席といって、ロングシートとして通常の通勤列車、クロスシートとして座席指定列車のどちらでも営業できることを前提にしています。様々な利用シーンを想定しながら、すべてのお客様が利用しやすく、また長く愛される車両の導入を目指しました。

座席の開発から車両性能の調整まで
一切の妥協を排してこだわりぬく

京王において新形式の車両は16年ぶりで、5000系は新しく生まれ変わった京王のイメージをお客様に伝える役割も担っていました。外観や内装の設計にあたっては、これまでの京王車両にはないデザインや形状、車両の設備を採用するため、関東、関西鉄道各社の新型特急車両や通勤車両に実際に乗ってまわるだけでなく、宿泊施設や商業施設など、ジャンルの異なる場所にも足を運んで研究を重ねました。みな競うようにアイデアを出し合っていて、活気と刺激のある毎日を過ごしていたと思います。
開発段階においては、最大の課題である座席の座り心地や快適性を追求するために、京王、車両メーカー、座席メーカーの3社でゼロから共同開発を行いました。工場で何度も確認を行い、3度もの試作、幾度とない試乗と他部署からの意見集約を繰り返しながら完成に至ったのが今のロング・クロス転換座席です。
また、新造車両導入にあたっては、日常的に車両を操作する運転士や整備士の意見が不可欠です。加速やブレーキの性能を数値で確認するだけではなく、入線整備の段階では試運転を繰り返し実施し、感覚的なレベルにおいても少しでも違和感の残らないように、妥協せずに微調整を行いました。結果的にお客様にとって乗り心地が良く、運転士に操作しやすい車両ができあがったと思っています。

変化を敏感に察知する観察力と
変化をチャンスと捉える行動力を

私は京王ライナーの開発を通じて、身をもって社会変化の速度を体感しました。少子高齢化や新しい技術の発展、サービスの多様化やこれに伴う競争の激化など、私たちを取り巻く社会環境はいよいよ大きく変化し、またその変化のスピードもますます早くなっています。
京王ライナーは、お客様の「座って帰りたい」というニーズの高まりや、他社線との競争激化、車両技術の進歩などを背景に、これをチャンスと捉えて鉄道部門一体となって取り組んだからこそ、実現できたプロジェクトです。変化をチャンスと捉える積極的な姿勢を持つことは、私個人の経験としてもとても大きい財産となりました。こうした社会変化に機敏に反応し、積極的に行動できる人間として、今後も成長できればと思っています。

大川 晶Okawa Akira

車両電気部 車両計画改良担当
2009年入社/工学部制御システム専攻卒

2009年入社。入社後3年間は車両整備業務に従事。2012年、車両の整備や改造における計画・発注・施工管理業務を担当する。その後、新造車両の計画・発注・施工管理などを通じて京王ライナーの実現に大きく貢献した。

※掲載内容は取材当時のものです。

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